十国ドライブウエー県道開設記念碑
静岡県知事 斎藤寿夫
東海の名勝箱根と、伊豆の泉都熱海とを結ぶ自動車道路は、土に彫
刻する芸術家伊豆箱根鉄道株式会社会長堤康次郎翁の卓見により、
昭和五年工事に着手し、同七年に営業を開始したわが国最初の有料
自動車道路である。
当時は、日本全国の自動車保有量は八万台、静岡県は三千台に達
しないころの事なれば、その無謀の計画を嘲笑するものもあったが、翁
は自ら陣頭に立って草を薙ぎ、茨を刈って工事を遂行した。
爾来三十有余年、この間経済恐慌、世界大戦等幾多の難関を突破し、
遂に年間百万台の自動車が往復するに至った。
特に富士・箱根国立公園の開発によってその利用度は益々増大した。
静岡県は道路の公共性に鑑み、有料道路の開放は地域社会開発上
喫緊の事と考え、敢えてその開放を翁に懇請して快諾を得た。その後、
昭和三十九年十二月十五日、翁の遺志に基づき、同社より正式に県に
譲り渡され、県道として開放するに至ったのである。これ全く翁が事業は
感謝と奉仕によって経営すべきだという信念の具現である。県は翁の魂
のこもるこの道路の維持と保全に当り、地域の開発並びに国家の発展
に寄与することと信ず。
予偶々この美挙に干与した故を以てその概要を記して後世に伝うと云爾
昭和四十年十一月
水野成夫撰
八十翁 青山於菟書
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